
AI エージェントに「前回のデプロイ手順を覚えておいて」と頼んでも、次回また同じ失敗を繰り返す——そんな経験はありませんか?
従来のAIメモリツールは「事実を記憶する」ことに特化していますが、Mengram は一歩進んで「失敗から学習して手順を自動進化させる」仕組みを実装しました。本記事では、Mengramの3層メモリ設計と、他のメモリツール(Mem0、Letta、Zep)との違いを解説します。
AIエージェントが同じ失敗を繰り返す理由
現在のAIエージェントは、会話履歴やRAG(Retrieval-Augmented Generation)を使って過去の情報を参照できます。しかし、以下のような問題が起きます:
- 失敗の記録はあるが、次回の手順に反映されない
- 「前回〇〇で失敗した」という事実は覚えているが、手順自体は更新されない
- 毎回同じ質問をして、同じ失敗を繰り返す
これは、従来のメモリツールが「事実の記憶」(Semantic Memory)に偏っていて、「手順の学習」(Procedural Memory)を扱えないからです。
Mengramの3層メモリ設計
Mengramは、人間の記憶を参考にした3種類のメモリを統合的に扱います:
| メモリタイプ | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| Semantic Memory | 事実・知識 | 「Railwayのビルドは5分かかる」 |
| Episodic Memory | イベント・経験 | 「2026年2月18日にデプロイが失敗した」 |
| Procedural Memory | 手順・ワークフロー | 「デプロイ手順: ビルド→マイグレーション→デプロイ」 |
この中で、Procedural Memoryが失敗から自動進化する点が、Mengramの最大の特徴です。
手順進化の具体例
以下は、デプロイ手順が失敗を経て進化する例です:
flowchart TB
subgraph v1["Week 1: Deploy v1"]
direction LR
v1_build[build] --> v1_push[push] --> v1_deploy[deploy]
end
v1 -->|"FAILURE: マイグレーション忘れ、DB障害"| v2
subgraph v2["Week 2: Deploy v2"]
direction LR
v2_build[build] --> v2_migrate[run migrations] --> v2_push[push] --> v2_deploy[deploy]
end
v2 -->|"FAILURE: OOMエラー発生"| v3
subgraph v3["Week 3: Deploy v3 ✅"]
direction LR
v3_build[build] --> v3_migrate[run migrations] --> v3_check[check memory] --> v3_push[push] --> v3_deploy[deploy]
end
style v1 fill:#ffcccc,stroke:#cc0000
style v2 fill:#ffffcc,stroke:#cccc00
style v3 fill:#ccffcc,stroke:#00cc00
この進化は、エージェントが失敗を報告すると自動的に行われます。
Mengramの基本的な使い方
Python とJavaScriptのSDKが提供されています。ここではPythonの例を紹介します。
インストール
| |
基本的なコード例
以下のコードは、会話を追加してメモリを自動抽出し、検索する例です:
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会話を追加するだけで、Mengramが自動的に以下を抽出します:
- Semantic: 「Railwayにデプロイした」「マイグレーションを忘れた」
- Episodic: 「デプロイ失敗→修正→解決」というイベント
- Procedural: 「デプロイ手順にpre-deployチェックを追加」
手順が失敗で進化する仕組み
Procedural Memoryの最大の特徴は、失敗をフィードバックすると手順が自動的に更新される点です。
手動フィードバック
以下のコードで、手順の失敗を報告できます:
| |
自動フィードバック
会話に失敗の記録を含めるだけで、Mengramが自動的に手順を更新します:
| |
この仕組みにより、エージェントは「同じ失敗を繰り返さない」ようになります。
Cognitive Profile: エージェントのパーソナライズ
Mengramには、メモリから「エージェントの人格」を生成する機能があります:
| |
この出力をLLM のシステムプロンプトに挿入するだけで、エージェントがユーザーの好みや過去の経験を考慮した応答をするようになります。
他のメモリツールとの比較
Mengramと主要な競合製品を比較します:
| 機能 | Mengram | Mem0 | Letta (MemGPT) | Zep |
|---|---|---|---|---|
| Semantic Memory | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| Episodic Memory | ✅ | ❌ | 部分対応 | ❌ |
| Procedural Memory | ✅ | ❌ | ❌ | ❌ |
| 手順の自動進化 | ✅ | ❌ | ❌ | ❌ |
| Cognitive Profile | ✅ | ❌ | ❌ | ❌ |
| Knowledge Graph | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| LangChain統合 | ✅ | 部分対応 | ❌ | ✅ |
| MCP サーバー | ✅ | ✅ | ✅ | ❌ |
| 価格 | 無料 | $19-249/月 | 無料(セルフホスト) | エンタープライズ |
各ツールの特徴
Mem0:
- Semantic Memoryに特化
- Knowledge Graphによる関連性の可視化
- 有料プラン($19-249/月)
Letta (MemGPT):
- コンテキスト管理が強み
- セルフホスト可能
- Episodic Memoryは部分対応
Zep:
- エンタープライズ向け
- Semantic Memory + Knowledge Graph
- 価格は要問い合わせ
Mengram:
- 3種類のメモリを統合
- Procedural Memoryが自動進化
- 無料(Apache 2.0ライセンス)
どのツールを選ぶべきか
用途に応じた推奨を整理します:
| 用途 | 推奨ツール | 理由 |
|---|---|---|
| チャットボット | Mem0、Zep | Semantic Memoryで十分 |
| DevOps/運用自動化 | Mengram | 手順の自動進化が有効 |
| カスタマーサポート | Mengram、Letta | Episodic Memoryで過去の問い合わせを参照 |
| 長期コンテキスト管理 | Letta | コンテキスト管理が強み |
| エンタープライズ | Zep | サポート体制が充実 |
LangChain/CrewAIとの統合
Mengramは、主要なエージェントフレームワークと統合できます。
LangChain統合
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CrewAI統合
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MCPサーバーとしての利用
Mengramは、Claude Desktop、Cursor、WindsurfなどのMCP 対応エディタと統合できます:
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この設定により、エディタ上でMengramのメモリ機能を直接利用できます。
まとめ
Mengramは、従来のメモリツールが扱わなかった「手順の学習」を実装したAIメモリAPIです。
主な特徴:
- 3種類のメモリ(Semantic、Episodic、Procedural)を統合
- Procedural Memoryが失敗から自動進化
- Cognitive Profileでエージェントをパーソナライズ
- LangChain、CrewAI、MCPサーバーとの統合
- 無料(Apache 2.0ライセンス)
向いている用途:
- DevOps/運用自動化(デプロイ手順の改善)
- カスタマーサポート(過去の問い合わせ履歴の活用)
- エージェントのパーソナライズ
「エージェントが同じ失敗を繰り返す」問題に悩んでいる方は、Mengramを試してみてください。